最近マスメディアなどに「インプラント叩き」のような記事や報道を目にすることが多くなった。
私の所属するスタディグループでもインプラント希望の患者さんが少なくなったという声が聞こえる。またインプラント希望の患者さんを取り合うため、価格破壊という名のもとに粗悪な安いインプラントを入れようとする歯科医もいると聞く。
当院ではインプラント希望の患者さんは依然と比べてそんなに減ってはいない。少し減ったかなという程度である。当院でのインプラントを必要とされる患者さんの減少の原因ははっきりしている。私の医院では歯を抜くような患者さんが減ったからだ。
何故インプラントを行うのか?その患者さんに歯が無くなったからだ。ある意味歯科医が抜歯したから歯が無くなったのである。当院の患者さんは数年~10年以上に渡ってきていただいている方が多い。定期的な予防治療を行うと、歯科の常識ではどう見ても抜歯しないとダメといわれるような歯がそれこそ何年にも渡って持つのである。それもあれが食べられない、これが食べられないといった食事の制限無しにである。
とある医院で「この歯はいずれダメになりますから、今の内に抜いてインプラントにしましょう」と言われ私の医院に来られた患者さんがいた。それから約十年経過するがまったく食事、その他日常生活に問題ない。多少動く程度である。その患者さんに「あなたの家系はみな胃がんの家系です。あなたもいずれ胃がんになりますから今のうちに胃を全部取りましょう」なんてことを内科医が言えばどのようなことになるだろうか。それと同じことを歯科医がしようとしているのではないかと思うのである。
しかしながらインプラント治療は否定されるものではない。当院でも天然歯より長持ちしているインプラントの患者さんがおられる。歯の無い患者さんにとって、「隣の歯を削らない、よく噛めて、見た目もいい」インプラントは最善の治療といえる。加えてインプラントは高額の治療費がかかる。インプラント治療費が30万かかるとすると、2~3ヶ月ごとの予防治療(約2000円)なら年に一万円として30年できる計算になる。それゆえインプラントは治療する歯科医側もされる患者さん側もより慎重になるべきだと思うのである。
